Vol.92
たばこと文化 1

先月のコラムはいかがでしたか?
バーのネタになりましたか?
今回は92回目。連載100回目までカウントダウンが始まりました。
今回はたばこが風習から慣習になり、やがて文化へと変わるまでの話です。
嶋田さんにご意見・感想をください!(2015年12月)


ヒロ嶋田さんご紹介

長くシガーダイレクトのシガーアドバイザーをつとめてくださったヒロ嶋田さん。シガーに関する専門コラムである「スモーキートーク」は、シガーダイレクトの各種ページの中でも常時ベスト3に入るほど、固定のファンがいらっしゃいます。
「なんでも鑑定団」の喫煙具鑑定士さんが「あいつの舌は特別」とおっしゃっていたのをお聞きしたことがあります。

「葉巻は嗜好品である。
自分の生活スタイルに色づけをする小物にすぎない。
大切なことは人の意見に振り回されることなく自分流を演出しよう。」
というスタンスは今も変わることなく、今月も原稿が届きました。


たばこ文化の始まり

▲コロンブスのアメリカ上陸を記念して作られたのがコイーバのシグロシリーズ。

たばこ文化の始まりは、コロンブスのアメリカ大陸上陸までさかのぼる。

1492年の秋、コロンブス一行が西インド諸島サンサルバドル島に上陸した際、現地の住民がコロンブスたち一行へ友好の印として差し出した贈り物のひとつに、「乾いたいい香りのする葉」があった。

これが、世界を席巻するまでになろうとは、誰も予測しなかっただろう。
しかし、一行の目当ては金や財宝であったため、コロンブスはまったく興味を示さず、この貴重な宝に好奇心を持ったのは、2人の船員のみだった。

現地の人たちが、葉を器用に巻いて着火する様子を見た彼らは、自分たちも同じように葉を巻いて、吸入したといわれている。この行為により2人は、たばこの魅力に取り付かれ、ヨーロッパまでこれを持ち込みことになる。

ここで、不思議なことがある。充分に熟成されていない、たばこの葉であったとしても始めて吸引したらニコチン酔いを起こしたことだろう。しかし、ヨーロッパまで喫煙の習慣をもたらした彼らは、耐性が出来ていたと想像される。つまり、何度も喫煙をし、習慣化されていたということだ。


たばこは西インド諸島から始まった

photo taken by Morio
コロンブスが、西インド諸島で出会った住民がしていた行為は、風習の域を出なかった。

辞書によると風習とは、「その土地や国に伝わる生活習慣や行事などを含めた、しきたりや慣わしのこと」とある。
西インド諸島近辺に伝わる喫煙という生活習慣は、アメリカ大陸を発見したコロンブス一行によって、西洋にもたらされ風習から異国より伝わった流行へと変化していった。

もし、たばこが西インド諸島でしか栽培できない特殊な植物であったら、ヨーロッパを経由して世界中に広まることもなく、ごく一部の金持ちで好事家の趣味として一過性のもので終わったことだろう。だが、たばこはヨーロッパで珍重されたて人々に受け入れられた結果、盛んに栽培されるようになった。

かくして西洋にもたらされた、たばこは百年を経たずして極東にもたらされる。たばこの伝来である。


たばこ、日本へ上陸!それはポルトガル人によって

▲フランシスコ・ザビエルと一緒に悪魔が日本へたばこを持ってやってくる。そこから始まる恐ろしい短編「煙草と悪魔」を 書いたのは芥川龍之介
日本にたばこをもたらしたのは、ポルトガル人だといわれている。その後、渡来の貴重品であったたばこは、日本で栽培することを目的に種を輸入することになる。最初の種が到着したのは、長崎県平戸であり、その石碑が今でも残っている。

しかし、平戸に上陸した種が日本の地に根付くことはなかった。
それからしばらく後に上陸した種が日本における、和たばこの基となった。

たばこが人々の間に定着し、各地で独特の吸引方法が考え出されたことにより、その土地独自の喫煙方法が生み出されていく。
ある土地では、たばこの葉を巻き上げて、その先端に着火し紫煙を吸引する。またある地域では、たばこを粉状にして鼻から吸引しニコチンを摂取する。別の場所では、道具を使い燃やした葉の煙を口中や肺で受け入れニコチンを血中に取り込み充足感を得る。
様々な方法や様式が産み出され消えていった。が、たばこはなくならなかった。

こうして、「たばこ」は文化となった。
文化とは、様々な技術や様式を通して根付いた生活様式のことであり、その場所においてほとんど全ての人間が、共通認識をもっている行動様式である。




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ヒロ嶋田のスモーキートーク
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