Vol.73 葉巻の煙


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73目は、葉巻の煙。

葉巻の煙を愉しむヒロ嶋田さんの原風景とは?あの有名俳優の煙と焚火のエピソードは?等々、ここでしか読めないコラムが今月も盛りだくさんです!(2013年10月)


ヒロ嶋田さんご紹介

長くシガーダイレクトのシガーアドバイザーをつとめてくださったヒロ嶋田さん。シガーに関する専門コラムである「スモーキートーク」は、シガーダイレクトの各種ページの中でも常時ベスト3に入るほど、固定のファンがいらっしゃいます。
「なんでも鑑定団」の喫煙具鑑定士さんも「あいつの舌は特別」と
おっしゃっていたのをお聞きしたことがあります。

「葉巻は嗜好品である。
自分の生活スタイルに色づけをする小物にすぎない。
大切なことは人の意見に振り回されることなく自分流を演出しよう。」
というスタンスは今も変わることなく、今月も原稿が届きました。


葉巻の煙

匂いは、過去の様々な思いを誘うことがある。

筆者の子どもの頃、近所の子どもたちが集まって近くの空き地で、晩秋の落ち葉をくべ、焚き火をしていた。
薪を集めに近くの雑木林に入ると、そこは一面に落ち葉で埋もれた茶色い世界。
団栗が、あちらこちら散らばって、黒い点々に見える。
枯れ葉は、各々の庭の木から落葉したものを熊手で掻き集めてあるから、なるべく細く長めの薪を、一心に集めていく。
子どもらの手に持ちきれるまでの量が、手に入ったら急いで家路につく。

太目の枝は、下のほうに敷いておき、細めの枝で小さなやぐらを組んでいく。
その中央に落ち葉を山に盛り、新聞紙を捻ったものに、火をつける。
雑木林の薪は、何種類もの木からなっているため、燃えるときの匂いや音が少しずつ異なっていた。
その薪や落ち葉の燃える匂いを嗅ぎながら、早く熾き火になれと願っていた。
傍らには、アルミホイルに包まれた、薩摩芋が並んで・・・。

筆者が焚き火を最後にしたのは、いつの頃だったろう。



渡哲也と焚き火のエピソード
東京でも、昔は焚き火が出来たらしい。
「焚き火」のエピソードで有名なのは、名優「渡哲也」氏だろう。
若い頃にものの本で読んだことがある。
渡氏と誰かが対談をする機会があり、寡黙で知られた2人のこと上手くいくだろうかと関係者は冷や冷やしていたそうだ。

対談が始まって、2人ともずっと黙り込んだまま、時間だけが過ぎていく。
終了間際になり、相手が痺れを切らしたのか、「趣味は?」と尋ねた。
すると「焚き火」とだけ答えて対談は終了した。

渡哲也氏が、好きな焚き火という行為は、炎と音と匂いの共演を愛でることを愉しむ文化的な行為。
筆者の場合は、焼き芋の香りを楽しみにしていた、食いしん坊の行為か。
筆者の原体験でもある枯れ葉が燃える香りは、葉巻の燃焼する香りを愉しむ行為へと続いている。


熟成の職人




▲キンテロ ナシオナレス


さて、少し前の話になる。旧友が亡くなった。筆者より、一回りも若い。
しかし、ハバナを語らせたら右に出るものは、いなかった。
彼は未完成の葉巻を育て、世に送り出す天才だったのかもしれない。
様々な葉巻を納得のいくまで寝かせ、吸い頃になってから披露する。熟成の職人のようだった。

彼が譲ってくれた葉巻の中で、筆者が最も気に入っていたのは、「キンテロ」だった。
キンテロといったら、機械巻きの安葉巻のイメージがある。
しかし、濃い香りのフルボディを好む筆者が始めて喫煙したときに、その味わいに舌を巻いた。それから、彼が用意してくれるキンテロは、筆者の大のお気に入りになった。
味わい深いキンテロも、もう手に入ることはない。


友に捧げる1本

友人が亡くなって暫く経ったある月夜に、自宅のキャビネットから1本の葉巻を取り出した。自宅のキャビネに眠っていた特別なキューバンダビドフだった。
これは、10年ほど前に、亡くなった友人から譲り受けて大切に保管してきた最後の1本だ。

この葉巻は、30年以上前にキューバで巻かれ、長旅を終え到着したのは、極東の島国。そこでまた永い眠りについたハバナは、やっと日の目を見たわけだ。

ヘッドをカッターで切り落とし、軽く口に銜え、ドローしてみる。
枯れた味わいの中に、力強いテロワールを感じることが出来る。
普段より少しばかり遠火で、柔らかく慎重に着火する。
ランセロタイプなので、中心に火を入れないようにすることに腐心した。
フットの周りに充分着火したことを確認して、口元にヘッドを運びブローする。中心まで火が回りきる前に、ゆっくりドローに切り替え、全体に火を回す。

往年のハバナの力強い香りが辺りに漂っている。
月下その紫煙をまとい、友の在りし日の姿を偲び、暫し時を過ごした。







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ヒロ嶋田のスモーキートーク
バックナンバー
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7つのCとは・・?
Vol.2 クリント・イーストウッドとシガー
シガーの似合う俳優といえば・・
Vol.3 Cigar in the movie
映画の小道具としてのシガー
Vol.4 Humidor
ヒュミドールってなんですか?
Vol.5 Humidor2 "Keep your cigar"
葉巻をおいしく保管しましょう。
Vol.6 What is Cigar?
葉巻とタバコの違いって?
Vol.7 What is Cigar 2?
タバコの葉、見たことありますか?
Vol.8 What is Cigar 3?
たばこの価値はどれくらい?
Vol.9 What is Cigar ? 4
葉巻に潜む脅威!その名も「葉巻虫」
Vol.10 Tobacco Leaves
たばこ畑って、まだ都市圏にもあるんですよ。
Vol.11 This is Cigar
実は美味しいショートフィラー。
Vol.12 This is Cigar2
おいしい葉巻は職人技が支えてるんです。
Vol.13 葉巻の色は?
ラッパーの色ってこんなにあるんです
Vol.14 葉巻を造る
葉巻工場の秘密兵器とは?
Vol.15 コヒーバの光と陰
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Vol.16 コヒーバの闇に埋もれた男(前編)
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Vol.17 コヒーバの闇に埋もれた男(後編)
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葉巻とお酒のマリアージュ!
Vol.19 葉巻の保管(夏編)
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Vol.20 All About Dupont(前編)
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Vol.22 いたりあ紀行(前編)
地球の裏側で見たタバコ文化
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Vol.30 クリスタルヨットクラブにて
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