Vol.74 香りの副産物


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バーのネタになりましたか?
73目は、葉巻の煙。

葉巻の煙を愉しむヒロ嶋田さんの原風景とは?あの有名俳優の煙と焚火のエピソードは?等々、ここでしか読めないコラムが今月も盛りだくさんです!(2013年10月)


ヒロ嶋田さんご紹介

長くシガーダイレクトのシガーアドバイザーをつとめてくださったヒロ嶋田さん。シガーに関する専門コラムである「スモーキートーク」は、シガーダイレクトの各種ページの中でも常時ベスト3に入るほど、固定のファンがいらっしゃいます。
「なんでも鑑定団」の喫煙具鑑定士さんも「あいつの舌は特別」と
おっしゃっていたのをお聞きしたことがあります。

「葉巻は嗜好品である。
自分の生活スタイルに色づけをする小物にすぎない。
大切なことは人の意見に振り回されることなく自分流を演出しよう。」
というスタンスは今も変わることなく、今月も原稿が届きました。


匂いと臭い

シガースモーカーにとって葉巻の紫煙は、たまらない香りだろう。
シガーを嗜まないシガレットの愛好者でも、葉巻の香りが軽く漂う空間は心地よい。
しかし、締め切った部屋で、何本もの葉巻を喫煙し痛飲などした翌朝は、窓を開けて新鮮な空気を入れ替えなければ、体中からシガーの臭いが消えないように感じる。

そもそも匂いとは単独で、空間に薄く漂っている間は香りを愉しむことができるが、ある濃度以上に漂い始めると苦痛になる。
筆者も紫煙好きだと自負しているが、狭いバーで何人もがシガーを燻らしているところに、外から入っていくとニコチン酔いになりそうになる。


「におい」は、匂いや臭いなどと書く。
心地よい香りを「匂い」と表現し不快なそれを「臭い」と表す。
さしずめ、シガーの紫煙が、ほのかに漂っているのを周囲にいる人たちが感じたときに、それは「匂い」になる。しかし、それが濃くなりすぎると「臭い」に変わる。

これは、シガーに限らず、アロマテラピーで使用される精油も同様で、たくさんの精油を一度に嗅いだり、濃すぎる精油を直接嗅いだりすると、刺激で気分が悪くなることと同様だ。

匂いも臭いも紙一重であり、それが、好いか悪いかは、そのときの周りの様子や喫煙者本人の体調などによって、感じ方が変わる。
匂いを感じるのは、脳の大脳辺縁系といわれる部分で、「匂い」を臭覚が感知し、直接この部分に信号を送り認識する。

前回、『匂いが過去の記憶を呼び覚ます』という趣旨のコラムを書いた。
その後、このことを調べてみたら、それをブルースト現象と呼ぶということが判った。


スモーカーの嗜み

▲マクレーランドBTラタキア

(現在のラタキア種は木で燻製しているので、ラクダの糞は使用していないそうです。)



さて、シガーの匂い同様に、パイプもモクモクと紫煙が昇り、
部屋中に充満してくると周りにいるノンスモーカーに気を使う必要が出てくる。
その中でも、独特のにおいを持っているパイプたばこを愛飲するスモーカーは、特にだ。

たとえば、らくだの糞を燻して乾燥させ熟成させる「ラタキア」の愛用者は、
外出先での喫煙に配慮がいる。

筆者が自宅マンションで、ラタキアが濃いパイプたばこを、
窓を開けたまま、喫煙していたときのこと。
遠くから「臭い」という声がして、足音が近づいてきた。
声の主は筆者を訪ねてきた友人で、建物から随分離れた場所に車を止め、
ドアを開けた瞬間に異臭がしてきたそうだ。

友人は、パイプをやらない。
ラタキアの香りであることを知らず、彼の臭覚は単に臭いものだと感じたわけだ。
それからラタキアを使用する際には、部屋を締め切り空気清浄機の世話になるようにした。
ラタキアのような香りの濃いパイプたばこが好きなハードスモーカー(筆者の造語で、ニコチンの耐性が強く、濃い味わいを好むスモーカーのこと)は、狭い都会では肩身も狭い。


世の中の禁煙、嫌煙ブームとも呼ぶべき風潮の中で、スモーカーも周囲との調和が必要になった。
シガーバーの中で喫煙するのなら、好きなシガーを思い切り愉しむことも出来よう。
しかし、シガーやパイプを売りにしていないバーや飲食店などでは、一声かけて着火する配慮がいる。
もちろん、断られることもあるだろう。
そこは、大人の嗜みとして、肩をすくめて、引っ込める余裕を持ちたい。

運よくバーなどで紫煙を楽しめるようであったら、加香されたパイプたばこを試してみると良い。
着火直後に、たばこに仕込まれたブーケが、周りに広がっていく。
実はスモーカー自身は、ドローから得られる紫煙からは、加香された香りをあまり感じない。
加工された香りは、ボウルから立ち上る紫煙を通して、部屋中に広がっていくのだ。


匂いの副産物


▲マクレーランド フロッグモートン
バーでパイプを喫煙しているときのことだ。
「良い香りですね」と見知らぬ女性に声をかけられた。
その時、使っていたパイプたばこは、「フロッグモートン」。
甘くとろけるような残り香が、特徴的だ。

パイプに興味を持ってくれた女性と、パイプの楽しみについて暫し語り合い、時を過ごした。これも、匂いの副産物なのだろう。







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ヒロ嶋田のスモーキートーク
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