Vol.46 パイプの構造
先月のコラムはいかがでしたか？バーのネタになりましたか？

46回目は、ブライヤーパイプの構造。
パイプ喫煙を始めるための基礎知識について、
ヒロ嶋田さんが語ってくださいます。

今回のコラムも楽しみですね！
（2011年2月）


パイプ喫煙を始めるにあたり、パイプの構造や名称を知ることで、ベテランからのアドバイスや商品の説明を理解しやすくなる。今回は、そこからスタートしよう。
ブライヤーパイプの構造

一般的なブライヤーパイプ
▲一般的に、2つのパーツからできている


パイプ　円形の内側
▲円形の内側は、隅に燃え残りができない
一般的なブライヤーパイプは、2つのパーツから出来ている。まず、ブライヤーで出来たたばこの葉を詰める部分。そして、口に銜える吸い口の部分だ。

ブライヤーで出来ている部分は、横から見るとL字型に曲がり、内部には紫煙を通す煙道がある。構造は、至って単純に出来ている。ボウルの内側にある火皿（チェンバー）にたばこを詰め、着火する。たばこに火が付くと煙が出るので、煙道を通じて吸い口の先にあるリップに開いた穴から吸引する。

火皿を上方から見ると円形で、内部は底に向かって真っ直ぐに彫られ、底は半球状に抉れている。火皿を円形に仕上げるのは、加工がしやすいからだけではない。三角形や四角形の内部では、たばこの燃焼が、均等に行われないため、隅に燃え残りが出来る。

その上、もうひとつ困った問題が出てくる。円形の内側であれば、燃焼温度を一定に保つため、チェンバー内のたばこをタンパーで、操作できる。しかし角があれば、燃え残ったたばこを混ぜて、全体の温度を一定にすることは、難しくなる。結果、一部分だけが高温になりパイプを傷めることになる。

ブレークイン

パイプ　カーボンあり
▲カーボンが塗られているタイプ


ロケットリーマー
▲カーボンの厚みは一定に維持する
ロケットリーマー


パイプ　カーボンなし
▲カーボンが塗られていないタイプ
新しいパイプを購入して、チェンバーに指を入れてみると黒い煤のようなものが、内部に塗りつけられている。

これは、カーボンだ。全てのパイプに塗ってあるものではないが、今では、ほとんどの製品に使われている。カーボンを塗らないパイプの内側は、ブライヤーの生地が剥き出しの状態だ。

ブライヤーが強い緻密な細胞を持っていても、たばこの燃焼時に発生する800℃を超える熱に晒されれば、表面から炭化が起こり、火皿内部を焦がしてしまったり、最悪の場合はパイプに穴が開いたりする。それを薄いカーボンの膜が、保護してくれる。 パイプ内部にカーボンの膜を作り、美味しく喫煙できる状態にする作業をブレークインという。


昔、パイプを始めたが、すぐに諦めたという人たちがいる。皆さん、年配者だ。
その頃のパイプに、カーボンを塗布していなかった。そのため、チェンバーの内部に、たばこの燃え残りである煤が付着して紫煙を柔らかくするまでは、刺激のある煙を吸引することになる。

結果、舌がピリピリと焼けるような苦痛を味わうことになるわけだ。ある作家が、ブレークインを替わってもらえるなら、大金を払っても良いと書いてあった気持ちが良くわかる。

もし、気に入って手に入れたパイプにカーボンの塗布がなければ、自身でブレークインを行うしかない。ブレークインの方法は、着火後のたばこの燃焼温度を低く抑え、ゆっくりと全体に火をまわすことだ。パイプ喫煙については、後述する。
吸い口（マウスピース）
パイプ　吸い口
▲エボナイトのリップ部分

ステムポリッシュ
▲エボナイトの吸い口磨き用ポリッシュ
ブレビア　ステムポリッシュ

マウスピースは、エボナイトやアクリル樹脂が主流になっている。

エボナイトは、天然ゴムと硫黄を混ぜて加熱をして、弾性の少ない硬質ゴムに変化させたものだ。黒檀「ebony」のような色合いから名づけられた。ゴムが主成分のため、加工がしやすく口に銜えたときに馴染みやすい。その上、磨くと漆のような光沢を発する。高級品のパイプには、エボナイトの丸棒から職人が手作業で、削りだして製作する。

エボナイトは、マウスピースに最も適した素材の一つだが、欠点もある。天然ゴムが主原料のため、長期にわたる使用によって、表面が茶色く変色してくる場合がある。 そして、食後の喫煙において、口中の食べ物のカスが付着すると変色しやすい。

また、喫煙中にリップを噛む癖がある人が、端を噛み切ったというケースもある。エボナイトの変色を防ぐために「吸い口磨き」で手入れを怠らないことが大切だ。

そのため、口当たりは、エボナイトに及ばないものの、耐久性や製作のしやすさなどから、アクリル樹脂のマウスピースを採用するケースが増えてきた。パイプの各部分の名称は以下の通りだ。

パイプの構造
（TSUGE Collection 2009-2010 カタログより抜粋）

パイプの形状

クールスモーキングをすることで、たばこ本来の喫味を味わうことが出来る。それでは、クールスモーキングをするには、火皿からリップまでの距離をなるべく長くとれば良い。しかし、シャンクやマウスピースを延ばすにも限界がある。


当コラムについての著作権はすべてヒロ嶋田氏に帰属します。
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