Vol.81 【季節のうつろいとシガー】
栗名月


先月のコラムはいかがでしたか？
バーのネタになりましたか？

今月は季節のうつろいとシガーを語る回、題して「栗名月」。
「へー、そうなんだ」という知識をもって、季節を楽しむのもまたよし、ですね。

今回も、テレビ「なんでも鑑定団」の喫煙具鑑定士さんが「シガーの味なら嶋田君に頼めば間違いない」とおっしゃる、ヒロ嶋田さんに語っていただきましょう！

私もオープンエアーでシガーを吸おうかな、と思います。（2014年9月）

ヒロ嶋田さんご紹介

長くシガーダイレクトのシガーアドバイザーをつとめてくださったヒロ嶋田さん。シガーに関する専門コラムである「スモーキートーク」は、シガーダイレクトの各種ページの中でも常時ベスト３に入るほど、固定のファンがいらっしゃいます。
「なんでも鑑定団」の喫煙具鑑定士さんも「あいつの舌は特別」と
おっしゃっていたのをお聞きしたことがあります。

「葉巻は嗜好品である。
自分の生活スタイルに色づけをする小物にすぎない。
大切なことは人の意見に振り回されることなく自分流を演出しよう。」
というスタンスは今も変わることなく、今月も原稿が届きました。


「中秋の名月」旧暦八月十五日

旧暦の八月十五日に浮かぶ満月は「中秋の名月」と呼ばれ、お供え物をして愛でる風習がある。「中秋の名月」と「仲秋の名月」わずかに漢字一文字の違いではあるが、仲秋とは本来、秋に入っての月全体を指す言葉だった。現在では、その意味が薄まったようで、仲秋と中秋を区別しなくなってきている。

中秋の名月といえば、団子や薄を供えて、真ん中の天空にお月様が描かれている図を思い描く方も多いだろう。満月に兎が餅つきをしていると、年寄りが幼子に話すような微笑ましい光景も思い浮かぶ。
「栗名月」旧暦九月十三日

その中秋の名月から約一ヶ月経った旧暦の九月十三日に愛でる月を、「栗名月」という。旧暦の九月というのは現代の十月過ぎ、夜寒になる頃に昇る満月から少し欠けた月を指す。

中秋の名月に供える食べ物はお団子である。それに対し栗や豆の収穫を過ぎた頃の栗名月は、栗や豆を供える。中秋の名月のお供えで有名なのは、中華系の人々が行う月餅を贈りあう行為だが、栗名月は平安時代に発祥したとも言われる古い風習で、日本古来のものらしい。
合わせてみる「中秋の名月」と「栗名月」

「中秋の名月」と「栗名月」は、ペアで愛でるものであり、片方のみを見てしまうと「片見月」と言われ、縁起が悪い。片見＝形見に喩えられるのだろう。
しかし、これは遊女の文化から出た言葉で、旦那を誘うときに「お月見・中秋の名月」を一緒にすることで、次の「栗名月」に誘う口実になるから使われたのが、始まりのようだ。

丸い月は、翌日から少しずつ欠けて小さくなる。十三夜の月は、まだその先の成長を秘めている。完全ではない、だから美しく見えるのか。
十月の寒気を含んだ、風に吹かれながらの夜空を見上げるのは、気持ちが落ち着くものだ。
 モンブランのマロン　イコール栗ではない

栗といえば、筆者はモンブランが幼い頃から大好物だった。モンブランには、マロンクリームがふんだんに使われている。そのため、マロンとは栗を指す言葉だと思っていた。

もう、10年ほど前になるだろうか。根津のビストロを紹介されたことがあった。「メゾン・デュ・シャテーヌ」、日比谷のグランメゾン「アピシウス」で高橋シェフのソースを担当していた、栗原氏の店だ。丁寧な仕事と、温和な人柄が良く表れた隠れ家的な場所だった。店の名の由来を聞いてみると、栗の家という意味だそうで、筆者が
「栗はマロンではないのか」と問うたところ、
「マロンは一粒栗を意味していて、和栗のような三つの栗がサンドイッチ状に仲良く毬の中に納まっているものをシャテーヌというのです。」と答えてくださった。

それから栗名月には、毬の中に住む三兄弟が充分熟して、狭い住みかに飽き飽きし、大きく背伸びをしたような、お尻の割れた栗を供えるようになった。



　
 秋の夜長に、シガー片手に

今年も、中秋の名月が愛でられた地域、生憎の曇り空で月がかくれんぼしていた地域とあるだろう。しかし、片見月になろうとも、年に一度の栗名月だ。秋の夜長に、シガー片手に夜更けまで見入ってみるのも、良いではないか。


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ヒロ嶋田さんへのメッセージ（1件)
こんにちわ。いつもコラムを拝見させてもらってます。
今回は、月のお話でしたので、月食のお話でも。
昨日、数年ぶりに、シガーを燻らせながら、月食を見ました。
月食というのは、食が終わりかけて
再度、太陽の光が見え始める瞬間が最も美しいです。
前回は、光が右上から見え始めましたが、今回は右上からでした。
少し雲が煙ってましたが、今回はまるでソフトボールの球体のように立体的に見えました。
ああ、天体というのは、今更ながらに球体だったんだなと認識しました。まるでコペルニクスの気分です。
秋はシガーが、なんとなくフカフカの心地よい感触で、大変に美味い季節ですね。
キャビネットの中のシガーも喜んでいるようです。
ではまた、お元気で。

(Y.Eさん)



当コラムについての著作権はすべてヒロ嶋田氏に帰属します。
お問い合わせはシガーダイレクトまで

　 　
ヒロ嶋田のスモーキートーク
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