Vol.55 Cool&Dry Smoking2


 先月のコラムはいかがでしたか?
 バーのネタになりましたか?
 55回目は、今注目されている
 パイプスモーキングについての第2弾。
 アイルランドの老舗ブランド ピーターソン」について、
 語ってくださいます!

 今回のコラムも楽しみですね!  (2011年12月)


ヒロ嶋田さんご紹介

長くシガーダイレクトのシガーアドバイザーをつとめてくださったヒロ嶋田さん。シガーに関する専門コラムである「スモーキートーク」は、シガーダイレクトの各種ページの中でも常時ベスト3に入るほど、固定のファンがいらっしゃいます。
「なんでも鑑定団」の喫煙具鑑定士さんも「あいつの舌は特別」と
おっしゃっていたのをお聞きしたことがあります。

「葉巻は嗜好品である。
自分の生活スタイルに色づけをする小物にすぎない。
大切なことは人の意見に振り回されることなく自分流を演出しよう。」
というスタンスは今も変わることなく、今月も原稿が届きました。


最初の1本の有力候補、ピーターソン

▲アイルランドのピーターソン小売店


▲職人によるパイプ制作の様子
パイプの選び方は、以前のコラムでも書いた。ストレートでもベントでも好みで選ぶのが良い。だが、最初の一本の有力候補がある。ピーターソンだ。

ピーターソンは、アイルランドのダブリンで、19世紀に創業したたばことパイプの販売店カップ・ブラザースが、その前身だ。1878年にパイプ職人のピーターソンを招いてパイプ製造を始める。その後、ジュースを溜める「ピーターソン・システム」煙道の出口が上向きの「ピーターソン・リップ」を考案。「アーミープッシュ」というシャンクの口に金属のマウントを嵌め、ボウルとマウスピースを接続する方法を採用した。

ピーターソン・システム

ピーターソン・リップ

ピーターソンの故郷、アイルランドは比較的治安が良い気候の安定した国だ。筆者などは、アイルランドと聞くと映画「タイタニック」の2等客室で踊っていた老若男女を思い出す。そういえば、毎年3月の聖パトリック・デーのパレードにピーターソンのパイプを銜えて参加していたこともある。クローバのシールを頬に貼り、表参道を練り歩くだけなのだが、祭りに参加するのは楽しいものだ。


ピーターソンの優れたシステム

▲ピーターソン・システム


▲ピーターソン・リップ


▲アーミーシステム


さて、ピーターソンの優れたシステムを紹介しよう。

まず、「ピーターソンシステム」。
パイプ喫煙で、どうしても避けられないことがある。火皿のたばこが燃え進むにしたがって、水分が溜まってくることだ。炭素を含む物質が燃焼するとき、水と二酸化炭素が発生する。高温の状態では、水蒸気となって漂っているが、温度が下がると液化する。

たばこの葉も燃焼すれば当然、水と二酸化炭素を発生する。このとき水分は、熱い煙の中に含まれているが、パイプの煙道を通るうちに荒熱が取れて、水滴になる。これが、火皿とシャンクの隙間に溜まっていく。

それだけではない。パイプは、ドロー(吸気)よりもブロー(呼気)の回数が多い。
火のコントロールをするために、吹き戻しが重要なのだ。

パイプの喫煙中にブローするということは、呼気に含まれる水分や唾液をマウスピースから注入していることになる。一般のパイプは、ボウルの底に空間はない。しかし、ピーターソンは、そこにジュース溜りという空間を設けて、水分がドローのタイミングで外へ出るのを緩和した。

次に「ピーターソンリップ」
通常、マウスピースに空けられた煙を通す穴は、煙道の延長線上にある。
つまり、真っ直ぐ穴を開けて、リップという口に銜えるところまで空気を通す。
しかし、ピーターソンは煙道から伸びる出口の穴を上向きにした。

これによって、紫煙は口腔内に広がりやすくなり、ジュースが、逆流しても止めやすくなる。また、煙から広がる香りや味わいは、舌の奥や鼻腔で感じるため、たばこの味をダイレクトに味わうことが出来るようになる。

最後に「アーミープッシュ」。
一般のパイプは、ボウルとマウスピースをダボと呼ばれる突起物で繋いでいる。
二つの凸凹の部分が、隙間なくピタリと収まっている。しかしダボは、マウスピースの端を削り細くして作る。そのため、つなぎの部分に横や斜めからの力が掛かると折れてしまうことがある。厄介なのはボウルの穴奥で折れてしまうと、取り出すことが叶わなくなる。

すると、パイプは、使えなくなる。ダボ折れと呼ばれる、このような事故は、トラブル全体の80%を占めている。そこで、ピーターソンは、ダボをなくしボウルにマウスピースを直接嵌め込む形式を採用した。このシステムは、アーミーシステムと呼ばれている。

これは、円錐台のマウスピースの先端を、ボウルに直接嵌め込むやり方だ。この場合、奥に押し込み止ったところでパイプは、しっかりと安定する。木と異素材の熱による収縮率の違いも、解決できる。

しかし、マウスピースを押し込むことによって、シャンクに余分な力が掛かる。するとシャンクの口が割れる原因になる。これを解決するため、シャンクエンドに金属をマウントしてある。金属は、銀製の高級品やニッケル普及品がある。どちらを選ぶかは、気分しだいか。



「Cool & Dry Smoking」が、パイプの世界の扉を開けるきっかけになることを願う。





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ヒロ嶋田のスモーキートーク
バックナンバー
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7つのCとは・・?
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映画の小道具としてのシガー
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シガーダイレクトクラブクラブミーティングに参加して
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