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Vol.8 Humidor2
いかがでしたか?
先月のコラムはバーのネタになりましたか?
気になる今月のテーマは
たばこについて。

葉巻のタバコ葉について語ってみよう!って含蓄の深い内容が今回。
押さえるところは押さえて、本に載ってない愉しみ方をヒロ嶋田さんに教えていただきましょう!

今月のコラムも楽しみですね!
たばこの葉の価値
今回は、少し寄り道をしてみよう。
たばこは、現在でこそ日本中どこででも手に入る嗜好品である。1990年代初頭にアメリカで巻き起こったシガーブームの影響で、日本でもプレミアムシガーと呼ばれる高級品が容易く手にはいるようになった。だが、古い文献を繰ってみるとその価値は驚くほど高かった。

たばこが日本に入ってきた初期には、たばこの葉とそれと同等の匁(もんめ=重さの単位で役3.75c)の銀と取引をされていた。銀本位制の時代にそれだけの価値を持つものは、稀であった。現在の物価指数との単純比較は難しいが、贅沢品であり高価なものであった。

それが、一般庶民に広がったのは国産のたばこ栽培が始まったからである。先月紹介した平戸を経由しての種の輸入と栽培は失敗したようであるが、需要が高まるにつれて各地での栽培が行われるようになった。

日本の喫煙事情

▲煙管。上は銀を延ばしたもの。モダンでありながらクラシック。これが粋というものか。
国産のたばこが栽培されるようになり、流通量は増大したが贅沢品には違いなかった。そこで、日本独自の喫煙具が発達することになる。煙管(きせる)である。一般的な煙管は、たばこの葉を詰める火皿の部分と吸い口は金属で作り、それを竹製の筒状のものでつないでいる。この部分を羅宇と呼ぶ金属の部分は通常、赤銅か真鍮、あるいは洋銀で作る。池波正太郎の「鬼平犯科張」に出てくる煙管は、「延べ煙管」と言われる総体銀製のものである。

煙管の火皿は、パイプと比べて極めて小さい。これは、たばこの葉が貴重品であったためその刻み幅を細かくし、喫煙回数を増やすためであった。実際、パイプやシャグたばこと呼ばれる手巻き用の葉と比べてみるとよくわかる。現在でもたばこ屋で「小粋」という製品が手にはいるので興味のある方はどうぞ。
余談ではあるが、煙管の火皿の部分を雁首という。雁首を揃えるという語源は、羅宇屋が煙管をきれいに並べるところから由来している。

▲武士と煙管もいいし、粋ですよね。

たばこの価値
明治に入り、たばこ産業は国の統制下に入ることになる。これ以降は、農家が勝手にたばこの葉を売り買いするどころか、役人に生えている葉の枚数までチェックされて国が管理をしていく。
 こんな話がある。実父が高校教師として長崎の五島に赴任したときのことである。

昭和20年代の始め、まだ日本全体が貧しかった頃のことである。ある年、新入生が入学後の数ヶ月間、全く授業料を納めていないことがあった。そのためその生徒に
「あまり長いこと月謝を滞納すると、これから先、納めにくくなるから両親と相談して少しでも都合をつけてもらったらどうか?」
と話したところ、
 「葉たばこの収納まで待ってください。収納が済んだらすぐに代金がはいりますから。」
と返事があった。 

それから数ヶ月して11月の終わり頃、その生徒が
「授業料を持ってきました。これで足りますか?」
と無造作にポケットから千円札を何枚か取り出して渡してくれた。数えてみると翌年の1月分を越える金額であった。生徒によると入学以来、初めて月謝を持ってきたので、月々いくら払うのかが判らない。それで、たぶんこれくらいだろうと言う金額を持ってきたというのだ。公立の学校であるから、先取りするわけには行かない。そこで、12月分までを受け取り残りを返した。

今にして思えば、お互いの信頼関係があってのことではあるが、のんびりした時代であった。そして、たばこは確実に現金収入が見込める貴重な作物であると実感した。今でも思い出すのは、収納までの畑仕事の大変さや夏の暑い盛りに乾燥室で薪を投入し、汗だくになりながらたばこを葉乾燥させる姿である。

コヒーバ回顧録

▲ご存知作家の北方謙三先生。インタビューしたときに、コヒーバを求めてキューバに渡った、シガー文化日本草創期のお話をお聞きしました。
コヒーバが日本に初めて輸入された当時の値段は、1本が約5万円だったと聞く。
筆者がそのコヒーバを初めて購入したのは、それからしばらくしてからのことである。
記憶が定かではないが、エスプレンディードスで、値段は1本1万円ほどであった。
現在とは比べようもなく高価で、2本購入するのがやっとであった。
その頃を思い出すたびに、今のシガーファンは恵まれていると思う。世界中の一流ブランドの製品が、安価に日本国内で入手出来るからである。
喫煙者は肩身が狭い浮き世になったが、歴史ある嗜好品として、葉巻を楽しんでいきたいものである。
 


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