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コラムニスト シマジ様からコメントをいただきました。
シガーダイレクトでもおなじみ、『甘い生活』や『乗り移り人生相談』などの著作をもつコラムニスト、シマジ様からロバイナ氏追悼のコメントをいただきました。 |
ロバイナは葉巻愛好者にとっては、あまりに有名な名前だ。
シガーの外側を包む葉、『ラッパー』と呼ばれる葉を作り続けた農園主。最高の葉を作り続け、カストロ前議長から「ドン」の称号を贈られた、キューバンシガーのゴッドファーザーであった。
そのドン・アレハンドロ・ロバイナが91歳で死んだ。享年91歳。
このニュースは葉巻愛好者にとっては、かなりの衝撃が走った。
シガーの表面に巻く葉っぱをラッパーと言う。その生産地で有名なのがブエルタ・アバホ地域だ。
ロバイナ家はそこに屈指の農園を所有し、代々タバコ農園を営んでいた。革命後、多くのタバコ農園が統合される中、ロバイナだけは先祖代々の貴重なタバコ農園を守り抜くために、共同生産をしてほしいというカストロの言葉を厳粛に拒絶した。
「極上なシガーを育てる最大の方法は家業としてタバコを栽培することです」と答えた。さすがのカストロもこの天才の我が儘を受け入れた。カストロは葉巻の旨さをチャーチル同様知り尽くしていたからだ。
ロバイナだけは先祖代々の貴重なタバコ農園を守り抜いた。すべての葉巻職人はキューバの国家公務員であるのに、ロバイナだけは個人農園主を貫いたのだ。
その畑で作るシガー用の葉はあまりにも上質。そのため、いまでも輸出用のハバナシガーの80%のラッパーは、ロバイナの畑の葉を使用している。
今夜シガーを吸うマニアも、実はそのラッパーがロバイナの畑のものを愉しんでいるかもしれない。
ロバイナの名がついたキューバンシガーがある。『ベガスロバイナ』というそのシガーの意味は『ロバイナさんの家』。
その箱に書かれたロバイナ翁とその家の絵を見るがいい。彼がいかにシガー愛好家、関係者に愛されていたかがわかる。
作り手の名前が付いている唯一の葉巻、それがベガスロバイナなのだ。そこまでの重要人物だから、キューバ国立葉巻産業の移動大使を長くつとめたのであろう。
彼がいかに誠実にシガーの葉を作り続けたかを想像することができるエピソードがある。彼の妻との関係だ。
17歳のときロバイナは、乗馬中、年上の美しい女、テレサに出会った。この運命の出会いにロバイナは雷に撃たれたように激しい恋に落ちた。初めテレサはロバイナを17歳のガキとして相手にしてくれなかった。断られれば断られるほど、ロバイナの情熱はますます炎と燃えた。4年後、念願叶って二人は結婚した。
2004年のシガー専門誌のインタビューの中で、ロバイナみずから彼女との畢生の愛を切々と語っている。
「
テレサのことを語るのはとても辛い。おれは彼女に会う前にすでに女を経験済みだった。テレサと最初に目を合わせたときから何かが違ったんだ。彼女と暮らした60年間は、愛情に変化はあったとしても、毎日、初めて出会った日みたいに感動の稲妻が体の中に走ったように感じたものだ。彼女の死について本当に受け入れることができたのは、つい最近のことだ。テレサはこれまでもこれからもおれの人生において、かけがえのない愛する唯一の女なのだ」
おそらく、彼は妻に対するように誠実に、そして愛情をこめて慈しみながらシガーの葉を作り続けたのだろう。
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5周年記念の限定ユミドール |
日本人で直接ロバイナさんの家に招待された御仁がいる。
シガーダイレクトだ。
そのときベガスロバイナ5周年記念の500セットのみ発売の100本入りのユミドールの限定品をサイン入りで手に入れた。
その限定品を気前よく
ブルガリでのパーティ「リアル・シガー・ナイト!」の参加者に振る舞い、そのうまさに私は思わずうなった。
濡れたような、オイリーなラッパー、熟成されたコクは、ハバナシガーを愛するものなら、うならずにすむものはいないだろう。これだけ質の高いシガーを作ったロバイナは、ハバナシガーの神様だったのだ。
「ロバイナさんは気さくな人でした。ドンは革命の際、逃げることもなく農園を守り、シガーを愛し、シガーを愛する沢山の愛好家にも愛された多大な功績をわたしは讃えて、ここにお冥福をお祈りします」とシガーダイレクト。
ベガスロバイナの葉巻は1997年の春、公式に発表された新しいブランドだ。葉巻を愛し続けたチャーチルもロバイナも享年は91歳。まさに大往生だ。10歳からシガーを吸い続け、全世界のシガーマニアに惜しまれつつ亡くなったロバイナ。世は禁煙ブームだが、シガレットと違い、100%タバコ葉が使われている葉巻は、ナチュラルで健康的だということを、この享年は象徴している。
(コラムニスト 島地勝彦)