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ぼくは、ぼくの従兄に連れられて、九つか十の時、吉原へ行ってるんだ。
この従兄っていうのが、やはり今という苗字で黒岩涙香が主宰していた『万朝報』という有名な新聞の記者をやっていた。これがまあ、ろくでもねえ野郎だけど、吉原の花魁(おいらん)に惚れられて、夫婦約束なんかしちゃって、色男ぶって吉原へ通うんだよ。
すると女が従兄に「今さん、私ね、女郎してるから、年期が明けてあんたと一緒になっても、もう子供を産めそうにないわ。だから、どっかの子どもを連れてきてよ。それで川の字になって寝てみたい」と、こう言うんだよ。
そしたら従兄にはそんなガキがいねえもんだから、じゃあというんで、オレを連れてったの。九つぐらいの時。』 |
キンパツ君 ひどい従兄ですね。九つですよ。
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それで従兄が女と話してる間、番頭だの遣手婆などがオレをチョロチョロ連れて歩くんだ。「坊や、おいで、おいで」ってね。』 |
二井さん 小さい子が珍しかったんでしょうね。
キンパツ君 小学生にさせる体験じゃありませんよ。
タケダ その後、関西学院に進んだ中学生の記録がありますよ。これは、シマジ会長に薫陶を 与えた今和尚の片鱗が垣間見えますね。
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