【7】保篠龍緒(ほしのたつお)訳「奇巌城」

▲保篠龍緒(ほしのたつお) 1892年 - 1968年
作家、翻訳家、『アサヒグラフ』編集長。モーリス・ルブランの「アルセーヌ・ルパン(リュパン)」シリーズの翻訳で有名。
シマジ会長 最初に読んだ大人の全集はモーリス・ルブランだ。

タケダ 怪盗ルパンですね?

シマジ会長 そうだ。

キンパツ君 おもしろいですよねえ!やっぱり峰不二子ですよねえ!

シマジ会長 それはルパン三世だ。俺が読んだ全集は保篠龍緒という素晴らしい翻訳者の訳だ。アサヒグラフの編集長をやった人だ。「奇巌城」というタイトルもこの保篠さんがつけたんだぞ。原題とは全く違う。

タケダ その自由度が少年の感性も磨いたんでしょうね。

シマジ会長 その大人用のモーリス・ルブラン全集24巻は凄かった。小学生の島地少年は ノックアウトだ。中学で、延原謙という名翻訳家による、コナン・ドイルの「シャーロック・ ホームズ」全6巻を読んだ。

タケダ 誰が翻訳するかで違いますよね。


【8】青春の島地少年


シマジ会長 そう!原文のニュアンス、香、手触り。そんなものを伝えられるかどうか、これは一つの作品を生み出すがごとしだ。

タケダ なるほど。

シマジ会長 いまとちがって味わい深い日本語の訳だ。そもそもの文章力がちがうんだろうな。

タケダ 日本語の美しさを感じますか。

シマジ会長 高校生になった青春の島地少年は、サマセット・モーム全集31巻を読んだ。

清野さん もの凄い勢いですね・・・。

シマジ会長 そして浪人になった島地青年は!

キンパツ君 浪人! 受験勉強はどうしたんですか?(笑)

シマジ会長 当時筑摩書房からここにある『世界ノンフィクション全集』全50巻の刊行がはじまったんだ。毎月1冊ずつ、本屋の店頭に並んだんだよ。俺が高校生のころから尊敬していたサマセット・モームの名訳者、中野好夫を筆頭に、吉川幸次郎、桑原武夫といった当時の第一級の教養人3人が編集していたんだ。読まずにはいられないだろ?

キンパツ君
 読まずにはいられない、って・・・本当に受験勉強はどうしたんですか?(笑)

シマジ会長 しょうがないだろ、名著なんだから。

【9】小説は絵空事、ノンフィクションは事実

3杯目はベンリアック 1971。40年のときを経た味わいは・・・。  
タケダ 知れば我慢できない、というシマジ会長の原型はすでにあったんでしょうね。(笑)

シマジ会長 「わがエヴェレスト」なんて、登ったヒラリー本人が書いているんだぜ!

タケダ ほう!

シマジ会長 小説は絵空事だ。しかし、ノンフィクションは事実だからね。「タイタニック号の最後」なんて、涙なくしては読めないよ!そして俺はそれに感動して、「編集者になろう!」と思ったんだよ。

キンパツ君 運命の本だったんですね。でも、よくずっと持っていらっしゃいましたね。

シマジ会長 いや、違うんだよ。当時四畳半の部屋で邪魔になって売っちゃったんだ、全部読んだから売ってもいいと思ったんだよ。もうそのことをずっと後悔だよ。


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上記「」内コメント出典;「リアル・シガー・ガイド」馳星周著(集英社インターナショナル)
馳先生の許可を得ています。


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