ヒロ嶋田のスモーキートークとは
・・・ シガーダイレクトのシガーアドバイザー、ヒロ嶋田さんによるコラム。
シガーだけではなく、パイプや煙管、それにまつわる文化にいたるまで、毎回テーマが広がります。
ぜひバーでのネタに仕入れていってください。


ヒロ嶋田さんご紹介

長くシガーダイレクトのシガーアドバイザーをつとめてくださったヒロ嶋田さん。シガーに関する専門コラムである「スモーキートーク」は、シガーダイレクトの各種ページの中でも常時ベスト3に入るほど、固定のファンがいらっしゃいます。

「葉巻は嗜好品である。
自分の生活スタイルに色づけをする小物にすぎない。
大切なことは人の意見に振り回されることなく自分流を演出しよう。」
というスタンスは今も変わることなく、今月も原稿が届きました。



 Vol.95

文化と衰退

【1】 かつてお正月は特別なイベントだった
 正月を迎え、年を重ねるごとに強くなる思いがある。
 少年の頃、新年を迎えるという特別な行事には、胸を躍らせたものだ。
年の瀬に叔母が鰤を送ってきてくれた。親父は昼頃届いた青光りする魚を、出刃でさばいて正月の用意。母はおせち料理を作るのに忙しく、子どもたちは掃除を手伝うのに飽きると、近所の幼馴染と広場で一足早い正月の遊びに出かけた。
 その当時、九州の田舎の子どもが屋外でする遊びといえば、凧あげやコマ回し、メンコなど。日が落ちるまで興じたものだった。
 大晦日の夜は特別な日で、夜遅くまで起きていても𠮟られることはない。除夜の鐘がTVの向こうで鳴り響く中、だんだん意識が薄らいでいく。
 翌朝になると、お年玉がもらえる。お年玉をもらい、おせち料理と雑煮を食した後は、外に飛び出し幼馴染と遊んだものだった。筆者が幼い時のお正月とは、特別なイベントだった。


【2】新年は探さなければ、なかなか出会えなくなった
 今年の正月も「け」の延長という感じだった。新年は探さなければ、なかなか出会えなくなった。「はれ」を探しに娘と出かけてみた。
 訪れたのは、有楽町の国際フォーラム。「J-CULTURE FEST にっぽん・和心・初詣 日本の城ギャラリー」と銘打ったイベント会場で、日本の正月らしさが演じられていた。
 そこには、伝統的な遊びなど、なかなか見られなくなった正月が溢れていた。
 筆者の子どもの頃と違うのは、幼馴染の仲間たちと一緒に遊ぶのではなく、当日会場で顔を合わせたばかりの子どもたちが、一緒に集い遊んでいることだった。少し離れて娘が一心不乱に遊んでいるところを見ていると、今も昔も、子どもたちに変わりがないと感じて、少しホッとする。
 伝統遊びコーナーでは、コマ回し、おはじき、羽子板、けん玉、かるたや福笑いなどを体験するコーナーがあり、コマを作ったり風車を作ったりすることもできる。そこでは、街頭から消えた、獅子舞や南京玉すだれの芸能を披露する小舞台も設えてあった。
 初めてでも遊びにも、子どもたちが溶け込めるように、ボランティアのガイドが丁寧にレクチャーをしてくれている。ガイドのほとんどが、年配者だった。その様子は心和むものがある。と同時に何か一抹の寂しさも感じる。


【3】喫煙も変化の波が押し寄せている
 筆者が子どもの頃に見ていたアニメの中で子どもたちは、空き地で遊び路地を走り回っていた。凧揚げをする場所も、ボール遊びをする場所もふんだんにあった。しかし、現代の都会っ子たちは、道でも公園でも規制があって、十分に遊ぶことが できない。小学生も高学年になれば、テレビゲームの方が、コマ回しや羽根つきよりも魅力的に見えるようだ。
 そして、みんなと一緒に体を動かして遊ぶ、日本の伝統的な遊びは減っていく。
 これから数十年も経つと、凧やコマなど博物館で年寄りが懐かしむ遊びになっていくかもしれない。遊びが変化していくように、喫煙についても変化の波が押し寄せている。


【4】細巻タイプの流行を分析する
 このところのシガレットの流行は、細巻きタイプのものらしい。昔ながらにピースやキャメルなどの喫味のしっかりしたたばこを目にすることが減ってきた。筆者の周りでも、道路に設置された喫煙所でも。その代り見かけるようになったのが、ポケットから薄い紙箱を取り出して、フィルターを指で押し着火、喫煙するスモーカーたちだ。
 細巻きのシガレットは、ニコチンやタールの量が少ないわけではない。また、本来のたばこの旨みや満足感は、細巻きでは得にくい。スタンダードサイズのシガレットよりも細巻きを喫煙している方が、チェーンスモークをより多くしているように感じる。

 シガレット1本あたりの燃焼時間は、体積に比例する。細くなれば吸引する量も増し、燃焼時間も短くなる。そのため、1本では満足感が得られず、2本目に手が伸びる。もちろん、喫味は、巻きが細くなれば辛みを感じやすくなり、たばこ葉本来の旨みは実感しにくくなる。そのため、メンソールなどの爽快感を得やすい着香たばこを目にする機会が増えたのだろう。
 旨いと感じない喫煙では、たばこに対する愛着も生まれない。そこにあるのは、一時的なニコチンの摂取とリフレッシュか。
 シガースモーカーが、楽しむゆとりとは趣が違うようだ。


【5】未来の市場はたばこを変えていく
 だが、たばこの業界も未来の市場に焦燥感を持っているらしく、新しい商品を続々投入してきた。その中で、電子たばこ・加熱式たばこは、これからのたばこを変えていく可能性を秘めている。
 煙が出ない、においも気にならない、健康にも良いかもしれない、となると既存のたばこから多くのユーザーがシフトしていくことだろう。(もちろん、健康にどのような影響があるのかは、これから検証していくことになる)
 今の技術では、蒸気を吸引して香りを楽しむだけか、ニコチン添加のものは、香りにプラスして、ニコチンの摂取をするのみだ。
 しかし、電子たばこが普及し進化を続ければ、いつの日かたばこと同じ喫味を感じながら、疑似喫煙を行うことが出来るようになる。
 そうなれば、ハバナやドミニカ、ニカラグアで生産するシガーの喫味を人工的に作りだすことも可能になる。それはシガースモーカーにとっても魅力的な商品になることだろう。
 本物のシガーよりも、疑似シガーを選ぶユーザーが増えてくれば、「喫煙」の意味も変わってくることになる。

 そのとき、オールドユーザーである我々は、フェイクを受け入れて共存できるだろうか。


 
 

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上記「」内コメント出典;「リアル・シガー・ガイド」馳星周著(集英社インターナショナル)
馳先生の許可を得ています。


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