【4】芸術の地産地消が始まった


長谷川さん
 50歳を前に県立美術館に異動になりました。そうなると昼も夜も演劇。最近は東京ではなく、韓国や中国をはじめ、海外でもやっています。

シマジ会長 劇作家であり、演出家として?

長谷川さん そうです。青森も演劇を10年続けると観客も育ってくるんですよね。これからは芸術の地産地消です。

シマジ会長 芸術の地産地消。いいねえ。

長谷川さん NHKのスタジオ演劇の最後は俺たちでした。101という一番大きいスタジオ にお客さんを入れて、キャメラ7台を回して。おもしろかったですねえ。

タケダ どんな話だったんですか?

長谷川さん 斎場での話なんです。焼き場で焼きあがるまでに見える人間模様。隠し子が東京から訪ねて来たりね。

タケダ 見てみたいです。映画は起承転結と派手なアクションで見せようとするものが多いじゃないですか。ところが長谷川さんの舞台は1時間半会話だけ、終盤「?何かあったに違いない」に行き着くところが凄いですよね。


【5】夢と情熱


長谷川さん それは演劇ですからね。映画と違って時間・空間をその場で捻じ曲げることができますからね。

タケダ 2人の主人公が身近ですよね。決して他人ではない。その身近な2人が追い詰められていく。ラストの3分は凄いです。

長谷川さん ラストの3分の長台詞、あれをやる役者自身が泣くんですよ。「この長台詞を最後までやりきった」「(実際には出てこない)彼女のことを思う」そんな気持ちがないまぜになってね。

タケダ 圧倒されて、私はあそこだけ3回巻き戻して見ました。

長谷川さん ありがとうございます。もう食えかけている2人ですから。特に主演の新井和之はそろそろバイトしなくても売れるでしょう。

シマジ会長 そうなんだよなあ。みんな夢だけで我慢しているんだよな。

タケダ 「破片」はガソリンスタンドでバイトしている二人。その車両修理の作業場での1時間半です。主役は彼女と同棲している。見えない将来にイラついている。もう一人の後輩は一所懸命お金を貯めている。貯まったらアメリカにわたって一旗あげる夢を見ている。主役はそんな後輩をうらやましくもねたましくも思い、そして追い詰められている。


【6】30歳は一つの転機

▲今日の1杯目、ラガヴーリン 12年 カスク ストレングス 2014 700ml 。銘酒の中の銘酒、ラガブーリン。
2002年11月に初リリースされて以来続くリミテッド・エディション。 フィルター処理をせず、カスク・ストレングスでボトリングしています。
長谷川さん 韓国、中国でもテーマは普遍なので受けています。

シマジ会長 おもしろいねえ!

キンパツ君 私は就職氷河期の世代です。日本の調子があきらかに悪い。勉強はしたはずなのに就職はできない、バイトは掛け持ち。それが10年20年続いているような友達も多いです。そんなのを見たら、その下の世代は怖くてお金なんて使えませんし、まして夢なんて見られませんよ。

シマジ会長 夢がもてないんだな。そんな中、夢をおいかけている俳優の子たちは凄いよ。

長谷川さん だから一つの転機が30歳です。カミさんもらって子どもを作るか、芝居か。

シマジ会長 厳しい世界だね。

タケダ 去年、東映から頼まれて居合の監修を頼まれたんですよ。そのとき初めて俳優さんたちと接したんですが、芝居への情熱があっていい人たちですが、大変な世界だ な、と思いました。

長谷川さん 情熱だけでは食えませんからね。

タケダ 芝居はたった2時間弱の中で人生をえぐりとるようなもんですね。


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上記「」内コメント出典;「リアル・シガー・ガイド」馳星周著(集英社インターナショナル)
馳先生の許可を得ています。


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